2009/04/16
* 花の安曇野めぐり-11- お話・・ 散る桜の花びらを・・・
内気なその女ひとが恋をしたのは二十才のときでした。
文学が好きなその青年は桜をとても愛していました。
ふたりはいつも城跡のある町の桜の木の下で会いました。
生まれてはじめての幸せな恋でした。
地味な着物でそっと逢いにゆく恋でした。
二年の月日が流れたころ別れは突然やってきました。
戦地に赴く青年を遠くから涙で見送りました。
待っても待っても便りは届きませんでした。
南の島の激戦で散っていったと風の便りに聞きました。
あの桜の木の下でまた会う固い約束。
何度の春を数えたことでしょう。
髪の白いおばあさんが・・・
毎年・・・ 城跡の陽だまりで・・・
誰かとお話しながら・・・ 散る桜の花びらを数えている・・・ と・・・
* おはなし * * 水千草 (すいちぐさ) *
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