2010/12/02

♪ カクネ里・・・

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        秋のある日のこと・・・

        私はこの川の左岸を入って・・・

        カクネ里を見に行くつもりだった・・・



        手前の大谷原に車を止めて橋を渡った・・・

        左に行けば爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳への登山口・・・



        右に折れて川沿いを下って・・・

        少し入ればカクネ里が見えるのだろうと・・・

        私は勝手に思い込んでいた・・・

       

        平家の落武者が棲みついたという・・・

        それはそれは山奥の伝説の集落・・・

              

        橋を渡った所でおじいさんに出会った・・・

        カクネ里までは遠いんでしょうかと訊ねた・・・



        ねえさん、一人かい・・・

        そんならヤメときましょ・・・

        つい最近も熊が出たでね・・・

        第一、カクネ里までなんかもう行かれねぇずら・・・

        



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        そんな話をしていたら・・・

        林の中でガサガサと物音が・・・

       

        ほーれ、見ましょ・・・

        おじいさんは私の顔を見て笑っている・・・



        カクネ里はもう・・・

        簡単には人を寄せつけない・・・

        原野に戻ってしまったらしい・・・



        何百年もそこに隠れ住んでいた人たちは・・・

       



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        往時平家の落ち武者が逃げのびてアルプス山麓にたどりつき、
        鹿島川をさかのぼって、
        鹿島槍ヶ岳北東面・大遠見山・五竜岳・天狗尾根に囲まれた、
        広いU字谷を探し出し、
        ここを屈強の隠れ家として住みついたと伝えられている隠れ里。
        地方の訛りに転じて「カクネ里」と呼ばれるようになった。


                「北アルプス開拓誌」 中村周一郎 著 より